研究内容

協同現象を利用した新しい高分子光機能材料の創出


 人類は石油などの化石燃料に依存しないエネルギー産出をめざす段階に来ています.太陽光・風力・水力・潮力・地熱などの再生可能エネルギーの有効利用を積極的に図るため,「光エネルギー変換材料」の研究を行っています.高分子を基盤として軽量・易成形性・耐水性・耐薬品性・安価など高分子の特徴を最大限生かした高機能・高性能光エネルギー変換材料を創出します.

高分子 液晶 光


 生物の体内にある高分子(DNA・タンパク質など)は一本の鎖を構成する単位の配列が一義的に決まっており,高分子鎖の長さも一定です。筋肉などではこれらの高分子が会合し,集合体として力を発生しています。しかし,一本一本の鎖が無秩序な状態で会合すると大きな力は発生しません。一方,高分子鎖が規則的に会合すると,一本一本の鎖が発生する力の単純な和よりはるかに大きな力を発生します。ここに高機能・高性能高分子材料創出の秘密があります。

 (1) 一次構造(モノマーの配列)を精密に制御する
 (2) 高分子鎖の長さ(分子量)を正確に制御する
 (3) 固体内での高分子鎖の配向・配列を自在に制御する


 本研究室では生物内に存在する高分子に匹敵する機能・性能を発現する高分子材料を創成するため,精密重合法を駆使して(1)(2)を満たす高分子を合成し,(3)を満たすための「精密分子配向制御法」の確立をめざしています。具体的には次の2つのアプローチを鋭意検討しています。

・高分子が自発的かつ規則的に配列する性質(自己組織化能)の付与
 自発的に配向する液晶分子を高分子に導入し,ナノスケールでの高分子の精密配向をめざします。

・外場を用いた配向制御
 外場の中でも非接触・遠隔操作が可能な光を用いた配向制御の手法を開拓します。



 光エネルギー変換材料として現在以下の2つの材料の研究を行っています。


1.光電変換材料(有機薄膜太陽電池)

 電子供与体分子と電子受容体分子を混合して光を照射すると,供与体(または受容体)分子の励起状態が生成し,界面では電荷分離が起こってホールと電子が生成します。それぞれが電極に到達すると外部回路に電流が流れて太陽電池として働きます。高分子を基材とする高性能光電変換素子を開発します。


有機薄膜太陽電池



2.光運動材料

 液晶高分子に光応答分子を組み込んで架橋すると,架橋フォトクロミック液晶高分子が得られます。この高分子では光応答分子の光反応・液晶分子配向・高分子鎖形態(コンフォメーション)が強く相関しており,光照射によって光反応を誘起すると1分子レベルの変化が物質全体の形態変化に増幅・変換されます。すなわち,光エネルギーを直接仕事に変換できる高分子材料が実現しました。この高分子を使うと,バッテリーや発電装置を一切使わず,ギアなどの駆動装置も一切装備しないで,光照射のみで3次元運動をするプラスチックモーターやロボットアームも作製できます(下の動画)。光のエネルギーを直接運動へ変換するという人類の夢に一歩近づきました。


架橋フォトクロミック液晶高分子




 【光運動材料の例】

光プラスチックモーター





光ロボットアーム





光尺取虫




 本研究室は芳賀正明教授が研究責任者を勤める研究開発機構のユニットとして,理工学部と連携し研究を行っています。



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